コンクリートについて調べていると、
「普通ポルトランドセメント」
「早強ポルトランドセメント」
「高炉セメント」
「フライアッシュセメント」
といった名前が出てきます。
さらに、設計書や配合計画書では、
18-8-40BB
のように「BB」と書かれていることもあります。
これらは、コンクリートに使用するセメントの種類に関係する表示です。
セメントはどれも同じように見えますが、種類によって、
- 強度が出るまでの速さ
- 固まるときに発生する熱
- 水や化学的な作用に対する抵抗性
- 施工するときの注意点
などが違います。
この記事では、土木工事で知っておきたい普通・早強・高炉・フライアッシュを中心に、「何が違うのか」「メリット・デメリットは何か」「実務では何を確認するのか」まで初心者向けに解説します。
セメントにはいろいろな種類がある
そもそもセメントは、コンクリートをつくる材料の一つです。
コンクリートは基本的に、
セメント+水+細骨材(砂)+粗骨材(砂利・砕石)
を練り混ぜてつくります。
セメントに水を加えると化学反応を起こして固まり、砂や砂利などを一体化させます。
セメント・水・骨材がどのように組み合わさってコンクリートになるのかは、コンクリートとは?何でできている?セメント・モルタルとの違いを初心者向けに解説で基本から解説しています。
このセメントにも、いくつかの種類があります。
JISで規定されるセメントは、大きくポルトランドセメント・混合セメント・エコセメントに分類されます。
今回覚えてほしい4種類を整理すると、次のようになります。
| 種類 | まずはこう覚える |
|---|---|
| 普通ポルトランドセメント | 一般的に使われる基本的なセメント |
| 早強ポルトランドセメント | 早い時期に強度が出やすい |
| 高炉セメント | 高炉スラグを混ぜたセメント |
| フライアッシュセメント | フライアッシュを混ぜたセメント |
4種類には、強度が出る速さや水和熱などにも違いがあります。まずは全体像を見てみましょう。

ただ、この表だけでは、
「早く強度が出ると何がいいの?」
「高炉スラグを混ぜると何が変わるの?」
という疑問が残ります。
それを理解するために、先にいくつかの言葉を覚えておきましょう。
セメントの違いを知る前に覚えたい4つの言葉
セメントの説明では、初期強度・水和熱・水密性・化学抵抗性といった言葉がよく出てきます。
意味が分かれば難しい話ではありません。
初期強度・長期強度とは?
コンクリートは、打ち込んだ瞬間から必要な強度を持っているわけではありません。
最初は軟らかい状態ですが、時間がたつにつれて硬くなり、強度が増していきます。
このうち、**打込み後の比較的早い時期の強度を「初期強度」**と呼びます。
一方、その後も時間をかけて発現していく強度を考えるときに「長期強度」という言葉が使われます。
例えば早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントより早い時期に強度が出やすいのが特徴です。
高炉セメントなどは初期の強度発現は比較的ゆっくりですが、その後も強度が増進していく特徴があります。
この「強度が出る速さ」が、型枠を外す時期や養生などにも関係してきます。
水和熱とは?
セメントに水を混ぜると、化学反応を起こして固まっていきます。
この反応を水和反応といいます。
そして、水和反応によって発生する熱が**水和熱(すいわねつ)**です。
簡単にいえば、
水和熱=セメントが水と反応して固まるときに出る熱
です。
小さなコンクリートではあまり意識しませんが、ダムや大きな橋脚など、一度に大量のコンクリートを打つ場合は話が変わります。
大量のコンクリートの内部では熱が逃げにくいため、温度が上昇します。一方、表面は外気によって冷やされます。
このような温度変化や内外の温度差によって、コンクリートにひび割れが生じることがあります。
そのため、大きな構造物では**「固まるときにどのくらい熱が発生するセメントなのか」**もセメントを選ぶうえで重要になります。
水密性とは?
水密性(すいみつせい)とは、簡単にいうと水を通しにくい性質です。
コンクリートには目で見えないほど小さな空隙があります。
コンクリートの内部組織が緻密になると水が通りにくくなるため、ダム、水路、地下構造物など、水の影響を受ける構造物では重要な性能になります。
「水密性が高い」と出てきたら、
水を通しにくいコンクリートなんだな
と考えればOKです。
化学抵抗性とは?
少し分かりにくいのが化学抵抗性です。
簡単にいうと、
コンクリートを劣化させる化学的な作用に対して、どのくらい抵抗できるか
を表します。
コンクリートは硬いので、どんな環境でも同じように長持ちすると思うかもしれません。
しかし、周囲の水や土などに含まれる成分から化学的な作用を受け、コンクリートが劣化することがあります。
こうした作用に対する抵抗性を「化学抵抗性」と呼びます。
セメントの種類によって、このような劣化に対する性質にも違いがあります。
ここまで分かれば、それぞれのセメントの特徴がかなり理解しやすくなります。
普通ポルトランドセメントとは?
普通ポルトランドセメントは、一般的なコンクリート工事に広く使用されるセメントです。
「普通」という名前のとおり、ほかのセメントの特徴を理解するときの基準として考えると分かりやすいでしょう。
生コンクリートの資料などでは**「N」**と表示されることがあります。
例えば、
24-8-25N
なら、最後の「N」が普通ポルトランドセメントを表します。
メリット
大きな特徴は、一般的なコンクリート工事に幅広く使用できることです。
特殊な性能を必要としない一般的な構造物では、基本となるセメントとして使われています。
デメリット
幅広く使用できる反面、特定の性能を求めるなら別のセメントが適している場合があります。
例えば、
もっと早く強度を出したい → 早強ポルトランドセメント
大きな構造物で水和熱を抑えたい → 低熱系のセメントなどを検討
といった使い分けがあります。
普通ポルトランドセメントを基準として、「今回の構造物では何を重視するのか」を考えると、ほかの種類との違いが分かりやすくなります。
早強ポルトランドセメントとは?
早強ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントより早い時期に強度が出やすいセメントです。
「早強」という名前を見ると、
普通より最終的に強いコンクリートになる
と思うかもしれません。
ここでいう「早強」の大きな特徴は、早い時期に強度が発現することです。
メリット|早く強度を確保できる
例えばコンクリートを打った翌日に、すぐ完成時と同じように扱えるわけではありません。
必要な強度が出るまでは、適切に養生する必要があります。
早強ポルトランドセメントは初期強度が大きいため、
- 早期に強度を確保したい
- 工期を短縮したい
- プレストレストコンクリートに使用する
- 寒冷期に施工する
といった場合に使用されます。
デメリット|水和熱が大きい
一方で、早強ポルトランドセメントは水和熱が大きいという特徴があります。
先ほど説明したとおり、水和熱とはセメントと水が反応するときに発生する熱です。
大量のコンクリートを打つ構造物では、この熱が内部にたまることで温度ひび割れの原因になることがあります。
つまり、
早く強度が出るから、すべて早強にすればいい
というわけではありません。
早く強度を出したいのか、水和熱を抑えたいのかなど、構造物や施工条件に合わせて選びます。
高炉セメントとは?
公共土木工事で目にする機会が多いのが高炉セメントです。
高炉セメントは、セメントをつくる材料の一部に高炉スラグを使用したセメントです。
高炉スラグって何?
「高炉」という言葉から分かりにくくなりますが、鉄をつくるところを想像してください。
鉄鉱石から鉄をつくる高炉では、鉄とともに別の溶融物が発生します。
これを冷却・加工したものが高炉スラグです。
この高炉スラグをセメントの材料として利用します。
高炉セメントは高炉スラグの分量によってA種・B種・C種に分類されます。
そのうち公共工事などでよく見かけるのが高炉セメントB種です。
高炉セメントB種は、
BB
と表示されます。
例えば、
18-8-40BB
なら、最後の「BB」が高炉セメントB種を表しています。
「18」「8」「40」「BB」がそれぞれ何を表しているのかは、コンクリートの18-8-40BB・24-8-25BBとは?数字と記号の意味を初心者向けに解説で詳しく解説しています。
メリット|長い期間をかけて強度が増進する
高炉セメントは、普通ポルトランドセメントと比べると初期の強度発現はゆっくりですが、その後も強度が増進していく特徴があります。
また、高炉スラグの割合が増えることで水和熱が小さくなるため、大量のコンクリートを施工するときの温度上昇を抑える効果もあります。
さらに、適切に施工・養生されたコンクリートでは組織が緻密になり、**水を通しにくい「水密性」や、化学的な作用に対する「化学抵抗性」**にも優れた性質を示します。
デメリット|初期の強度発現が遅い
高炉セメントで初心者に特に覚えてほしいのが、
最初の強度が出るまでに時間がかかりやすい
ということです。
特に気温が低いと、セメントと水の反応が進みにくくなります。
すると、
「まだ十分に強度が出ていないのに型枠を外してしまった」
といったことがないよう、普通ポルトランドセメント以上に初期の養生や強度確認が重要になります。
実際の公共工事でも、使用するセメントの種類によって湿潤養生期間の目安が異なります。
高炉セメントを使っていると分かったら、名前を確認して終わりではなく、
「養生はどうする?」
まで考えることが実務では重要です。
フライアッシュセメントとは?
フライアッシュセメントは、セメントをつくる材料の一部にフライアッシュを使用したセメントです。
フライアッシュって何?
フライアッシュとは、石炭を燃焼させたときに発生する非常に細かな灰のうち、集じん器で集められたものです。
「灰をコンクリートに入れて大丈夫なの?」
と思うかもしれません。
フライアッシュには、セメントが水と反応してできた物質の一部と時間をかけて反応する性質があります。
この反応をポゾラン反応と呼びます。
名前を無理に覚える必要はありません。
ここでは、
フライアッシュは時間をかけて反応し、コンクリートの性質に影響する
と理解しておけば十分です。
メリット|水和熱を抑えられる
フライアッシュを使用すると、水和熱を小さくできる特徴があります。
そのため、ダムなど一度に大量のコンクリートを施工するマスコンクリートで利用されます。
マスコンクリートとは、簡単にいうと、
セメントの水和熱による温度変化を考える必要があるほど、大きなコンクリート
です。
また、フライアッシュは非常に細かな球状の粒子であるため、コンクリートのワーカビリティーを改善する効果もあります。
ワーカビリティーとは、
まだ固まっていないコンクリートの施工のしやすさ
のことです。
型枠の中へ打ち込んだり、鉄筋の周囲までコンクリートを行き渡らせたりするときの扱いやすさに関係します。
デメリット|早い時期の強度が出にくい
フライアッシュを使用したコンクリートも、初期の強度発現が比較的ゆっくりになることがあります。
そのため、養生期間や型枠を外す時期などに注意が必要です。
フライアッシュセメントにもA種・B種・C種があり、フライアッシュの割合が異なります。
4種類の違いをもう一度整理
ここまで4種類を詳しく見てきました。最後に、「何が得意で、何に注意するセメントなのか」を整理しておきましょう。
| 種類 | 強度が出る速さ | メリット | 注意したいこと |
|---|---|---|---|
| 普通ポルトランド | 標準的 | 一般的な工事に幅広く使える | 特殊な性能が必要なら別の種類を検討 |
| 早強ポルトランド | 早い | 早期に強度を確保しやすい | 水和熱が大きい |
| 高炉 | 初期は比較的ゆっくり | 長期的な強度増進、水密性・化学抵抗性など | 初期強度と養生に注意 |
| フライアッシュ | 初期は比較的ゆっくり | 水和熱を抑えやすい、施工性などにも特徴 | 初期強度と養生に注意 |
ここまで見ると、セメントにはそれぞれ得意・不得意があることが分かります。
「どれが一番性能のよいセメントか」を決めるのではなく、構造物や施工条件に必要な性能によって使い分けるものです。
中庸熱・低熱ポルトランドセメントもある
ここまで4種類を中心に説明しましたが、ポルトランドセメントにはほかにも種類があります。
代表的なのが、
中庸熱ポルトランドセメント
低熱ポルトランドセメント
です。
名前から想像できるように、普通ポルトランドセメントなどと比べて水和熱を抑えることを考えたセメントです。
大きな構造物では内部に水和熱がたまりやすいため、水和熱による温度上昇を抑えたい場合などに使用されます。
最初からすべての種類を覚える必要はありません。
まず普通・早強・高炉・フライアッシュを理解してから、
「水和熱をさらに抑えたいときには、こういうセメントもある」
と覚えておけば十分です。
実務ではセメントの種類をどう確認する?
ここまで読むと、
「じゃあ施工者が現場に合うセメントを選ぶの?」
と思うかもしれません。
公共工事では、まず設計図書で指定されているコンクリートを確認します。
例えば設計図書に、
18-8-40BB
と書かれていたとします。
最後の「BB」は、今回説明した高炉セメントB種です。
施工前には配合計画書などを確認し、
- セメントの種類
- 呼び強度
- スランプ
- 粗骨材の最大寸法
- 水セメント比
- 単位セメント量
などが、設計図書や適用する基準と合っているか確認します。
配合計画書に出てくる「水セメント比」「単位水量」「単位セメント量」などの見方は、コンクリートの配合とは?水セメント比・単位水量から配合表ができるまでを解説で詳しく解説しています。
さらに、打込み後には使用したセメントの種類や気温などに応じて、必要な期間、コンクリートを乾燥させないようにする湿潤養生を行います。
湿潤養生の期間はセメントの種類や気温によって変わります。実際に何日養生するのか、施工者・発注者は何を確認するのかは、コンクリートの養生とは?湿潤養生の方法と養生期間を初心者向けに解説で解説しています。
つまり実務では、
設計図書で指定を確認する
↓
配合計画書で使用するセメントを確認する
↓
そのセメントの特徴を踏まえて施工・養生する
という流れになります。
「BB=高炉セメントB種」と暗記するだけでなく、高炉だから初期強度や養生にも注意しようと考えられるようになると、セメントの種類を知っている意味が出てきます。
まとめ
セメントにはさまざまな種類があります。
最初は、
普通ポルトランドセメント → 一般的なセメント
早強ポルトランドセメント → 早く強度が出やすい
高炉セメント → 高炉スラグを使い、長期的な強度増進などに特徴がある
フライアッシュセメント → フライアッシュを使い、水和熱を抑えやすい
と整理すると分かりやすいでしょう。
そして、セメントの特徴を調べるときに出てくる専門用語も、
初期強度 → 早い時期の強度
水和熱 → セメントが水と反応するときに出る熱
水密性 → 水を通しにくい性質
化学抵抗性 → 化学的な作用による劣化に抵抗する性質
と考えれば、それほど難しくありません。
実務ではセメントの名前だけを見るのではなく、その種類にはどんな特徴があり、施工や養生にどう影響するのかまで確認していきましょう。
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出典・参考資料
一般社団法人セメント協会|セメントとは|セメントの種類と用途
普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントなど、セメントの種類ごとの特徴や用途を確認。
一般社団法人セメント協会|セメント規格
ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメントなどのJIS上の分類・規格を確認。
国土交通省|土木工事共通仕様書・施工管理基準等
令和8年3月版の土木工事共通仕様書(案)から、コンクリートの材料・施工・養生など公共工事での取扱いを確認。



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