土木工事では、施工状況や出来形、品質などを記録するために工事写真を撮影します。
現場に出たばかりの人なら、
「とりあえず写真をたくさん撮っておけばいい?」
「何を撮ればいいの?」
「完成したところを撮れば十分じゃないの?」
と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
しかし、工事写真は単なる「工事の記念写真」ではありません。
工事が完成すると見えなくなってしまう部分や、施工中にしか確認できない状況などを記録し、工事が適切に施工されたことを確認するための重要な資料になります。
この記事では、土木工事における写真管理の基本から、工事写真を撮影する目的、写真管理基準の見方、撮り忘れを防ぐ考え方、発注者側のチェックポイントまで初心者向けに解説します。
※必要となる撮影項目・撮影頻度・提出方法等は、工種や施工条件、適用される基準等によって異なります。実際の工事では、その工事に適用される契約図書、共通仕様書、写真管理基準等を確認してください。
そもそも工事写真はなぜ撮るの?

主任、工事写真って、なんであんなにたくさん撮るんですか?

じゃあ例えば、コンクリートを打設したあとに「鉄筋が設計どおり配置されていたか確認したい」ってなったらどうする?

コンクリートの中ですよね……。

そう。完成してからじゃ見えないよね。だから施工中にしか確認できないものを写真として残しておくことが大切なんだ。
土木工事では、工事が進むにつれて見えなくなってしまう部分がたくさんあります。
例えば、コンクリート構造物では、コンクリートを打設すると内部の鉄筋を直接確認できなくなります。
地中に埋設する構造物や管なども、埋戻し後には施工状況を簡単に確認できません。
そのため工事写真は、施工状況や出来形、品質などを後から確認できる記録として重要な役割を持っています。
写真管理とは?
写真管理とは、簡単にいうと、
工事の施工状況や出来形、品質などを写真として記録し、適切に管理すること
です。
工事写真には、施工前から完成までのさまざまな段階の記録があります。
重要なのは、
「写真をたくさん撮ること」が写真管理ではない
ということです。
必要なものを、必要なタイミングで、後から見ても施工状況が分かるように記録することが大切です。

じゃあ、とりあえずいっぱい撮っとけば安心ってわけじゃないんすか?

枚数が多ければいいというものではないぞ。整理するのも大変じゃし、必要な写真が抜けていたら、関係ない写真を100枚撮っても代わりにはならんからの。
写真管理で特に注意したいのが、後から撮り直せない写真です。
施工が進むと見えなくなる部分などは、撮影を忘れてから気付いても、同じ状態で撮り直すことが難しくなります。
そのため施工前に、
「この工事では、何を、いつ撮影する必要があるのか」
を把握しておくことが重要です。
工事写真にはどんなものがある?
必要となる工事写真は工事内容によって異なります。
国土交通省の写真管理基準(案)では、工事写真について施工状況や安全管理、使用材料、品質管理、出来形管理など、さまざまな区分が設けられています。
代表的なものをイメージすると、
- 着手前・完成写真
- 施工状況写真
- 安全管理写真
- 使用材料写真
- 品質管理写真
- 出来形管理写真
- 災害写真
- その他必要となる写真
などがあります。
工種や施工内容によって必要となる写真は変わるため、実際の工事では適用される写真管理基準等から、必要な撮影項目を確認する必要があります。
出来形管理・品質管理と工事写真の関係
ここまでの記事で解説してきた出来形管理や品質管理にも、工事写真は関係しています。
例えば出来形管理で構造物の寸法を測定したとします。
測定結果を管理表に記録するだけでなく、必要に応じて測定状況などを写真として記録します。
品質管理についても同様です。
コンクリートの品質試験などでは、必要な試験を行うだけでなく、その実施状況を写真として記録する場合があります。

出来形管理と品質管理とは、別々の話じゃないんですね。

そうだね。管理表や試験結果だけじゃなく、施工状況を写真として残すことも工事記録の一つなんだ。
つまり、
出来形管理
→ 必要な形状・寸法などを確認する
品質管理
→ 必要な品質を満たしているか確認する
写真管理
→ それらを含めた施工状況などを写真として記録する
と考えると分かりやすいでしょう。
出来形管理について詳しくはこちら。
👉 出来形管理とは?規格値・測定項目・管理方法をわかりやすく解説
品質管理について詳しくはこちら。
👉 土木工事の品質管理とは?出来形管理との違いや管理項目をわかりやすく解説
写真管理基準はどうやって見るの?
「工事写真が必要なのは分かったけど、結局何を撮ればいいの?」
というときに確認するのが写真管理基準です。
写真管理基準には、工種ごとに必要となる撮影項目や撮影頻度などが示されています。
最初からすべてを覚える必要はありません。
まずは、
① 自分の工事の工種を確認する
↓
② 必要となる撮影項目を確認する
↓
③ どのタイミングで撮影するのか確認する
↓
④ 撮影頻度や注意事項等を確認する
という流れで見ていくと分かりやすくなります。

また基準を見るんすか……。

出来形も品質も写真も基本は同じじゃ。全部暗記するんじゃなく、自分の工事に必要なところを調べられることが大事なんじゃよ。
写真管理基準を見るときも、
「何を撮るか」だけでなく「いつ・どの程度撮る必要があるのか」まで確認する
ことがポイントです。
工事写真で大切なのは「何を確認できる写真なのか」
工事写真を撮影するときに意識したいのが、
この写真で何を確認したいのか?
ということです。
例えば出来形管理の写真なら、写真を見た人が測定箇所や測定状況などを確認できる必要があります。
施工状況写真なら、どの工種のどのような施工状況なのか分かることが重要です。
ただ写真を撮影しただけで、必要な部分が写っていなかったり、何を示している写真なのか分からなかったりすれば、記録として十分に機能しない場合があります。

写真ならちゃんと撮りましたよ!

ほう。これは何の写真じゃ?

寸法を測った写真ですね

測った部分が全部写っとらんぞ…
写真を撮影するときは、
「あとから、この写真を初めて見る人でも内容を確認できるか?」
という視点を持つと分かりやすいでしょう。
工事写真でありがちな失敗
工事写真では、いくつか注意したい失敗があります。
① 必要な写真を撮り忘れる
特に注意したいのが、施工後に見えなくなる部分です。
例えば埋戻し前やコンクリート打設前など、そのタイミングを逃すと同じ状態を撮影できなくなる場合があります。
「あとで撮ろう」と思っているうちに次の工程へ進んでしまうこともあるため、施工前に必要な写真を確認しておくことが重要です。
② 何を撮った写真なのか分からない
写真は残っていても、
「どこの写真?」
「何を確認しているの?」
となってしまえば、記録として分かりにくくなります。
写真を見る人が、撮影箇所や施工状況などを確認できるよう意識しましょう。
③ 必要な部分が写っていない
出来形測定などでは、写真自体は撮影していても、確認したい箇所や測定状況などが十分に分からない場合があります。
撮影した直後に、
「必要なものがちゃんと写っているか」
を確認する習慣をつけておくと安心です。
撮り忘れを防ぐには?
工事写真の撮り忘れを防ぐ一番の基本は、
施工が始まってから考えるのではなく、施工前に必要な写真を確認しておくこと
です。
まず施工する工種を確認し、適用される写真管理基準等から必要な撮影項目を拾い出します。
そのうえで施工の流れと照らし合わせ、
施工前に撮る写真
↓
施工中に撮る写真
↓
次の工程へ進む前に撮る写真
↓
施工後に撮る写真
というように整理しておくと、撮り忘れを防ぎやすくなります。
発注者は写真管理のどこを見る?
ここからは、発注者側の視点で見てみましょう。
施工計画書に写真管理の項目が書かれているだけでなく、
「この工事に必要な写真が適切に計画されているか?」
という視点で確認することが重要です。
チェックポイント① 必要な撮影項目が入っているか
まず確認したいのが、工事内容に対して必要な撮影項目が計画されているかです。
施工方法や工種などを確認しながら、適用される写真管理基準等と照らし合わせます。
品質管理と同じように、過去の施工計画書をそのまま流用している場合には注意が必要です。
工事内容が変われば、必要な写真も変わる可能性があります。
チェックポイント② 撮影頻度は適切か
必要な撮影項目が記載されていても、撮影頻度が適切とは限りません。
写真管理基準等を確認し、今回の工事に必要となる撮影頻度が計画されているか確認します。
チェックポイント③ 施工後に確認できなくなる箇所を把握しているか
発注者側でも特に意識したいのが、不可視部分です。
次の工程に進むと見えなくなる部分については、必要な記録が残る計画になっているか確認しておくことが重要です。
チェックポイント④ 工事写真から必要な内容を確認できるか
実際に提出された工事写真を見るときは、写真があるかどうかだけでなく、
「その写真から確認したい内容が読み取れるか」
を見ることが大切です。
撮影箇所や施工状況など、必要な情報を確認できる写真になっているかを確認しましょう。
写真管理は「撮ること」ではなく「記録を残すこと」
工事写真という言葉から、
「現場で写真を撮る作業」
というイメージを持つかもしれません。
しかし、本来の目的は写真を撮ることそのものではありません。
施工状況や出来形、品質などについて、工事が適切に施工されたことを後から確認できる記録を残すことが重要です。
そのため、
何を確認するための写真なのか
↓
いつ撮影する必要があるのか
↓
どの程度の頻度で必要なのか
↓
必要な内容が写真から確認できるか
まで考えることが写真管理では重要になります。
まとめ|工事写真は「あとから確認するための記録」
写真管理とは、工事の施工状況や出来形、品質などを写真として記録し、適切に管理することです。
特に重要なのが、完成すると見えなくなってしまう部分や、施工中にしか確認できない状況です。
写真管理では、
施工する工種を確認する
↓
必要な撮影項目を確認する
↓
撮影時期・頻度等を確認する
↓
必要なタイミングで撮影する
↓
必要な内容が写っているか確認する
↓
写真を適切に整理・管理する
という流れを意識しましょう。
そして発注者側では、提出された写真管理の計画だけを見るのではなく、施工方法や工種などと照らし合わせ、
「この工事で後から確認できなくなるものは何か?」
という視点を持つことが重要です。
工事写真は、ただたくさん撮ればよいものではありません。
必要な写真を、必要なタイミングで、後から見ても分かるように残す。
これが写真管理の基本です。
関連記事
施工計画書の基本から確認したい方はこちら。
👉 施工計画書とは?目的・提出時期・記載内容をわかりやすく解説
出来形・品質・写真管理を含む施工管理計画の全体像はこちら。
👉 施工計画書の施工管理計画とは?出来形・品質・写真管理の書き方を解説
出来形管理について詳しくはこちら。
👉 出来形管理とは?規格値・測定項目・管理方法をわかりやすく解説
品質管理について詳しくはこちら。
👉 土木工事の品質管理とは?出来形管理との違いや管理項目をわかりやすく解説
出典・参考資料
本記事は、国土交通省が公表するデジタル写真管理情報基準、写真管理基準(案)、土木工事共通仕様書等を参考に、初心者向けに内容を整理・解説しています。
実際の工事では、工事ごとに適用される契約図書、共通仕様書、写真管理基準等を必ず確認してください。



コメント