土木工事では、「出来形管理」と並んで重要なのが品質管理です。
しかし、初めて施工管理に携わる人なら、
「そもそも品質って何?」
「出来形管理とは何が違うの?」
「どんな試験をすればいいの?」
と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
この記事では、土木工事における品質管理の基本から、出来形管理との違い、コンクリートを例にした品質管理、発注者側のチェックポイントまで初心者向けに解説します。
※必要な試験項目・規格値・試験頻度等は、工種や施工条件、使用材料、適用される基準等によって異なります。実際の工事では、その工事に適用される契約図書、共通仕様書、施工管理基準等を確認してください。
そもそも工事の「品質」って何?

主任、そもそも工事でいう『品質』って何なんですか?

例えば、見た目がきれいなコンクリートでも、必要な強度が出てなかったらどうなると思う?

なんか簡単に壊れちゃいそうですね。

そういうこと。構造物は見た目だけじゃなく、求められている性能・品質を満たしていることが大切なんだ。
土木工事における「品質」は、単に見た目の良し悪しを意味するものではありません。
使用する材料や施工されたものが、設計図書や仕様書、施工管理基準等で求められる性能・品質を満たしていることが重要です。
品質管理とは?
品質管理とは、簡単にいうと、
使用する材料や施工されたものが、必要な品質を満たしているかを確認すること
です。
工種ごとに必要となる試験項目や試験方法、規格値、試験時期・頻度などが定められており、それらに基づいて品質を確認します。
例えばコンクリートなら、完成した構造物の見た目だけでは、そのコンクリートが必要な品質を確保できているか判断できません。
そのため、施工中の適切なタイミングで試験や測定を行います。
出来形管理と品質管理の違い
出来形管理と品質管理は混同しやすいので、整理しておきましょう。
| 出来形管理 | 品質管理 | |
|---|---|---|
| 主に確認するもの | 形状・寸法など | 材料や施工されたものの品質 |
| 例 | 幅・高さ・厚さ・延長など | 強度・スランプ・空気量など |
| 主な確認方法 | 測定 | 試験・測定など |
例えばコンクリート構造物なら、
出来形管理
→ 幅・高さ・厚さなどが適切か
品質管理
→ 使用したコンクリートが必要な品質を満たしているか
をそれぞれ確認します。
つまり、
出来形がOKだから、品質もOKとは限りません。

ちゃんとした形に造るだけじゃなくて、中身の確認もするってことっすね。

そういうことじゃ。どちらも大切な施工管理じゃぞ。
出来形管理について詳しく知りたい方はこちら。
出来形管理とは?規格値・測定項目・管理方法をわかりやすく解説
品質管理では何を確認する?
品質管理の内容は工種によって異なります。
基本的には、
施工する工種を確認する
↓
適用される品質管理基準等を確認する
↓
必要な試験項目・規格値・試験頻度等を確認する
という流れで考えます。
大切なのは、
「品質管理なら、この試験をやればOK」
と一律に覚えないことです。
工事内容や施工条件によって、必要となる品質管理は変わります。
コンクリートの品質管理を例に見てみよう
品質管理を理解するには、コンクリートを例にすると分かりやすいでしょう。

コンクリートの品質管理って、強度試験くらいじゃないんですか?

実際にコンクリートを使用するときに必要な品質管理基準の一覧を見てみようか。

国土交通省 中部地方整備局 国土交通省「土木工事共通仕様書」について(令和6年3月改訂版)抜粋

…………多すぎません?

そう見えるよね。でも、この全部をすべての工事でやるわけじゃないんだ。
国土交通省の品質管理基準を見ると、セメント・コンクリートだけでも多くの試験項目が定められています。
例えば、材料に関する試験だけでも骨材の試験などがあり、施工段階になると塩化物総量、単位水量、スランプなどの項目があります。
さらに、圧縮強度、空気量などの試験や、条件によっては施工後のひび割れ調査なども規定されています。
ただし、ここで注意したいのが、
「表に載っている項目を全部やればいい」という意味ではない
ということです。
項目によって「必須」「その他」の区分があり、JISマーク表示されたレディーミクストコンクリートを使用する場合には除かれるものなど、適用条件も設定されています。
そのため品質管理では、工事内容や使用材料、適用される基準を確認して、その工事で必要になる管理項目を拾い出すことが重要です。
品質管理基準はどうやって見るの?
品質管理項目がたくさんあることは分かりました。
では、実際に品質管理基準を見るときは、どこを確認すればよいのでしょうか。
最初から表のすべてを理解しようとすると大変ですが、まずは次の項目に注目すると分かりやすくなります。
① 工種
→ どの工事についての品質管理なのか
② 種別・試験区分
→ 材料、施工など、どの段階で行う試験なのか
③ 試験項目
→ 何を確認する試験なのか
④ 試験方法
→ どのような方法や規格に基づいて試験するのか
⑤ 規格値
→ どの基準を満足する必要があるのか
⑥ 試験基準
→ いつ、どの程度の頻度で試験するのか
⑦ 摘要
→ 適用条件や注意事項など

項目多すぎて、どこ見ればいいか分かんないっす……。

全部覚える必要はないぞ。まず自分が施工する工種を探すんじゃ。

そこから必要な試験を見ていくんすね。

そうじゃ。試験項目だけじゃなく、規格値や試験基準、摘要まで確認することが大切じゃぞ。
例えば、コンクリートの品質管理で「コンクリートの強度」を確認する場合も、
「コンクリートの圧縮強度試験をする」
ということだけを確認して終わりではありません。
その工事に適用される品質管理基準から、
- どの試験方法で行うのか
- 規格値はいくつなのか
- いつ・どの程度の頻度で行うのか
- 摘要欄に条件や注意事項がないか
まで確認します。

国土交通省 中部地方整備局 国土交通省「土木工事共通仕様書」について(令和6年3月改訂版)抜粋
品質管理基準は、数字を丸暗記するためのものではありません。
「自分の工事では何を、どの基準で、いつ確認する必要があるのか」
を調べられることが大切です。
品質管理は試験をして終わりではない
ここまで読むと、
「必要な試験をちゃんとやれば品質管理はOK」
と思うかもしれません。
しかし、品質管理は試験を実施して終わりではありません。
例えばコンクリート工事では、生コン工場側の試験員などが現場で品質試験を行うこともあります。
では、品質試験をしてもらっていれば、施工者は何も確認しなくてよいのでしょうか?

おっしばさん、コンクリートの品質管理なら大丈夫っすよ!生コン屋さんが試験してくれてましたから。

そうか。で、試験結果は確認したのか?

え? 試験員さんがちゃんとやってたんで、大丈夫じゃないんすか?

試験をしてもらうことと、品質管理を任せっぱなしにすることは別じゃぞ。
品質管理では、「試験を実施した」という事実だけでなく、その内容と結果まで確認することが重要です。
施工計画書で定めた品質管理と実際の施工を照らし合わせ、
必要な試験が実施されているか
↓
必要な頻度を満たしているか
↓
試験結果が規格値や基準を満たしているか
↓
結果が適切に記録されているか
まで確認していきます。
品質管理は適切なタイミングで行うことが重要
例えば、構造物の完成後にコンクリートのひび割れが発生したとします。
コンクリートのひび割れには、材料や配合、温度、乾燥収縮、施工方法、締固め、養生など、さまざまな要因が考えられるため、品質管理が不十分だったことだけを原因と断定することはできません。
しかし、施工時に必要な試験や確認を実施していなければ、施工時に要求された品質を満たしていたのか確認できず、ひび割れの原因を調査するための重要な記録も不足してしまいます。
また、品質管理の中には、施工後では同じ条件で確認し直すことができないものもあります。
そのため、
「あとで確認すればいい」ではなく、施工前に必要な品質管理を把握し、適切なタイミングで試験・確認を行い、その結果を記録しておくことが重要です。
発注者は品質管理のどこを見る?
ここからは、発注者側の視点で見てみましょう。
施工計画書に品質管理の表が付いているからOK、ではありません。
発注者側で重要なのは、
「この工事に必要な品質管理が適切に計画されているか?」
という視点です。
チェックポイント① 工事に必要な品質管理項目が入っているか
まず確認したいのが、必要な品質管理項目に漏れがないかです。
施工方法や使用材料などと品質管理計画を照らし合わせ、その工事で必要となる品質管理が計画されているか確認します。
特に注意したいのが、過去の施工計画書の流用です。
似たような工事でも、使用する材料や施工条件などが違えば、必要となる品質管理が変わることがあります。

去年と同じような工事なら、そのままでもよさそうですけど……。

似ている工事でも条件まで同じとは限らないよ。今回の工事に必要な品質管理になっているかを確認しないとね。
チェックポイント② 規格値は適切か
次に、施工計画書に記載されている規格値を確認します。
品質管理項目が入っていても、規格値が今回の工事に適用される基準と違っていては意味がありません。
品質管理基準や設計図書等と照らし合わせて確認しましょう。
「前の工事もこの数字だったから大丈夫」
ではなく、今回の工事に適用される基準を確認することが重要です。
チェックポイント③ 試験時期・頻度は適切か
品質管理では、何を試験するかだけでなく、いつ・どの程度の頻度で試験するかも重要です。
例えば必要な試験項目がすべて書かれていても、試験頻度が不足していれば、計画どおりの品質管理とはいえません。
そのため、
試験項目と試験基準はセットで確認する
と覚えておくと分かりやすいでしょう。
チェックポイント④ 摘要欄まで確認しているか
意外と見落としやすいのが摘要欄です。
品質管理基準には、試験項目や規格値だけでなく、適用条件や省略できる条件などが摘要欄に記載されていることがあります。
表の数字だけを拾うのではなく、その試験がどのような条件で必要になるのかまで確認することが大切です。

発注者は、施工者が提出してきた施工計画書の品質管理表と品質管理基準を見比べればいいんですね。

品質管理表だけ見ても、そもそも必要な項目が抜けていることには気付きにくいからね。大変だけど必要なチェックだよ。
ここが発注者側では特に重要なポイントです。
施工計画書を確認するときは、品質管理表だけを単独で見るのではなく、
設計図書や施工方法、使用材料などを確認しながら、品質管理基準と施工者が提出した品質管理表を照らし合わせる
ことで、必要な管理項目の漏れを見つけやすくなります。
まとめ|品質管理は試験結果まで確認する
品質管理とは、使用する材料や施工されたものが、必要な品質を満たしているか確認するための管理です。
出来形管理が主に、
「求められた形や寸法になっているか」
を確認するのに対して、品質管理では、
「求められた品質を確保できているか」
を確認します。
そして、品質管理で大切なのは試験を実施することだけではありません。
必要な品質管理項目を確認する
↓
施工計画書に反映する
↓
必要な時期・頻度で試験する
↓
試験結果が規格値や基準を満たしているか確認する
↓
結果を記録する
ここまでつながって、品質管理になります。
若柴くんのように、
「生コン屋さんが試験してくれていたから大丈夫」
で終わらせるのではなく、必要な品質管理が計画どおり実施され、その結果が基準を満たしていることまで確認することが大切です。
また発注者側では、提出された品質管理表だけを見るのではなく、施工方法や使用材料などと照らし合わせ、
「この工事に必要な品質管理が本当にそろっているか?」
という視点で確認しましょう。
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出典・参考資料
本記事は、国土交通省が公表する土木工事施工管理基準及び規格値等の品質管理基準などを参考に、初心者向けに内容を整理・解説しています。
実際の工事では、工事ごとに適用される設計図書、共通仕様書、施工管理基準等を必ず確認してください。



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