土木工事では、決められた工期の中で工事を完成させるために工程管理を行います。
初めて工程を考えるとき、
- 工程表って何から作ればいい?
- それぞれの作業に何日かかるか分からない
- 完成日から逆算すればいい?
- 工程が遅れたらどうすればいい?
と悩む人も多いのではないでしょうか。
工程管理で大切なのは、いきなり工程表に線を引くことではありません。
まず「この工事をどうやって造るのか」を考えることが工程づくりのスタートです。
この記事では工程管理の基本から、初心者が実際に工程を組むときの考え方を、簡単な側溝工事を例にして解説します。
後半では、発注者が工程を確認するときのポイントも紹介します。
※実際の工程は、工事内容、施工条件、施工方法、人員・機械、天候、関係機関との調整などによって変わります。本記事は基本的な考え方を解説するものです。実際の工事では契約図書や現場条件等を確認して工程を検討してください。
工程管理とは?
工程管理とは、簡単にいうと、
工事を工期内に完成させるために、施工の順序や日程を計画し、実際の進み具合を確認しながら調整していくこと
です。
例えば、側溝を施工するとしましょう。
大まかに考えても、次のような作業があります。
測量・丁張 → 掘削 → 基礎施工 → 側溝据付 → 埋戻し → 舗装復旧
工程管理では、このような作業について「どの順番で施工するか」「何日必要か」「いつから始められるか」などを考えます。
そして、工事が始まった後は計画と実際の進捗を比較しながら調整していくことも重要です。
「工程表を作ること」と「工程管理」は違う
初心者が勘違いしやすいのが、
工程表を作ること=工程管理
という考え方です。
工程表は、工程を管理するための道具の一つです。
実際の工程管理は、次のように進めます。
| 段階 | やること |
|---|---|
| ① 計画 | 施工順序や必要日数を考える |
| ② 施工 | 計画した工程に沿って工事を進める |
| ③ 確認 | 計画と実際の進捗を比較する |
| ④ 原因把握 | 遅れている場合は原因を確認する |
| ⑤ 調整 | 必要に応じて工程を見直す |
工事では、雨天、資材納入の遅れ、現場条件の変化など、予定どおりに進まないこともあります。
そのため、工程表を作って終わりではなく、工事中も計画と実績を比較することが工程管理では重要です。
初心者向け|工程を作る8つのSTEP
「この工事の工程を考えてみて」
と突然言われても、初心者なら何から始めればいいのか分からないと思います。
まずは、次の順番で考えてみましょう。
| STEP | 考えること |
| STEP1 | どんな作業が必要? |
| STEP2 | どの順番で施工する? |
| STEP3 | それぞれ何日かかる? |
| STEP4 | 作業以外に必要な日数は? |
| STEP5 | 同時にできる作業は? |
| STEP6 | 工期内に完成する? |
| STEP7 | 工程に余裕はある? |
| STEP8 | 実際の進捗と合っている? |
最初から完璧な工程表を作ろうとせず、一つずつ順番に整理していくのがポイントです。
STEP1|まず必要な作業を書き出す
いきなりExcelなどで工程表を作り始める必要はありません。
最初に、
「この工事を完成させるには何をする必要があるか?」
を書き出します。
例えば側溝工事なら、
- 現地確認
- 測量・丁張
- 既設構造物撤去
- 掘削
- 基礎施工
- 側溝据付
- 埋戻し
- 舗装復旧
- 片付け
- 完成
といった作業が考えられます。
さらに工事によっては、現場作業以外にも必要なものがあります。
| 現場作業 | 現場作業以外 |
| 掘削 | 材料手配 |
| 基礎施工 | 関係機関との調整 |
| 構造物据付 | 検査・立会 |
| 埋戻し | 交通規制の調整 |
| 舗装 | 試験・確認 |
この段階では、まだ細かい日付まで決めなくても構いません。
まず必要な作業を漏れなく把握することから始めましょう。
STEP2|作業の順番を考える
必要な作業を書き出したら、次に施工する順番を考えます。
側溝工事なら、例えば、
掘削 → 基礎施工 → 側溝据付 → 埋戻し
という順番になります。
側溝を据えてから掘削することはできません。
つまり工程を考えるときは、
「この作業を始めるためには、何が終わっている必要がある?」
と考えると分かりやすくなります。

工程って、作業を順番に並べればいいんすか?

そうじゃ。ただ並べるんじゃなくて、**「次の作業を始めるには、何が終わっている必要があるか」**を考えるんじゃ。

なるほど。実際に施工する順番を考えて並べるんすね。

そういうことじゃ。それが工程を組む基本になるぞ。
STEP3|それぞれ何日かかるか考える
次は、それぞれの作業に必要な日数を考えます。
基本的な考え方の一つが、
施工数量 ÷ 1日に施工できる数量 = おおよその施工日数
です。
例えば100mの側溝を施工する場合
1日に20m程度施工できる条件なら、
100m ÷ 20m/日 = 5日
となり、おおよそ5日必要だと考えられます。
しかし初心者なら、ここで疑問が出てきます。
「そもそも1日20mってどうやって決めるの?」
1日の施工量を考えるときは、次のような情報が参考になります。
- 過去の似た工事
- 自社の施工実績
- 現場代理人や職長など経験者の意見
- 作業員数
- 使用する建設機械
- 現場の広さ
- 資材搬入条件
- 交通規制
- 周辺環境
例えば同じ100mの側溝工事でも、
広い場所で施工する100m
と
狭い道路で交通規制をしながら施工する100m
では、1日の施工量が同じとは限りません。
ポイント:数量だけで決めず、「この現場条件なら1日にどれくらい施工できるか」を考える。
分からない場合は、適当な数字を入れるのではなく、過去の工事や経験者に確認することも大切です。
STEP4|作業していない時間も工程に入れる
工程を考えるときは、実際に施工している時間だけを考えないことが重要です。
| 考慮するもの | 具体例 |
| 休日 | 土日、会社休日など |
| 天候 | 雨天などによる施工不能 |
| 材料 | 製作期間、納入待ち |
| 養生 | コンクリート等の養生期間 |
| 確認 | 検査、立会、試験など |
| 調整 | 関係機関、他工事、地元との調整 |
| 規制 | 交通規制等 |
例えば、現場の準備が完了していても、必要な材料が届かなければ施工できません。
また、施工後に一定の養生期間が必要なら、すぐ次の作業へ進めないこともあります。
「作業に5日かかる」=「5日後には次の工程へ進める」とは限りません。
現場作業以外に必要となる時間も工程に入れて考えましょう。
STEP5|同時にできる作業を探す
すべての作業を一つずつ順番に並べると、工期が必要以上に長くなることがあります。
そこで、
「同時に進められる作業はないか?」
を考えます。
例えば施工区間を分けられるなら、
| A区間 | B区間 |
| 側溝据付 | 掘削 |
| 埋戻し | 基礎施工 |
というように、複数の作業を並行して進められる場合があります。
ただし、並行作業には注意も必要です。
- 必要な作業員を確保できるか
- 建設機械を確保できるか
- 作業場所が干渉しないか
- 資材供給が間に合うか
- 安全に施工できるか
などを確認する必要があります。
「同時にできる」と「同時にやっても問題ない」は別物です。
STEP6|工期内に完成するか確認する
ここまで整理できたら、工程表に落とし込みます。
そして、
この計画で工期内に完成できるか?
を確認します。
もし間に合わない場合は、例えば次のような方法を検討します。
- 作業員を増やせないか
- 機械を増やせないか
- 施工箇所を分けられないか
- 並行施工できないか
- 施工順序を変更できないか
- 施工方法を変更できないか
- 材料を早く手配できないか
ここで注意したいのが、工程表上の日数だけを短くしないことです。

このままだと工期に収まらないっすね……工程表だけちょっとギュッとしときます?

工程表は縮んでも、現場は縮まんぞ。

現場がExcelに追いついてこないっすね

追いつかせる方法を考えるのがお前の仕事じゃ。
工程を短縮するなら、なぜ短縮できるのか
まで説明できる計画にすることが重要です。
STEP7|工程に余裕があるか確認する
工程表ができたら、もう一つ確認したいことがあります。
工期ギリギリの工程になっていないか?
という点です。
工事では、
- 雨が続く
- 施工量が予定より上がらない
- 材料納入が遅れる
- 想定外の現場条件が見つかる
といったことも起こります。
1日遅れただけで完成日に間に合わなくなるような計画では、工程上の余裕がほとんどありません。
特に意識したいのが、
「どの作業が遅れると、工事全体の完成に影響するのか?」
という視点です。
すべての作業の1日の遅れが、完成日の1日の遅れにつながるわけではありません。
工程に余裕がある部分と、遅れると後続作業まで影響する部分を把握しておくと、工程管理がしやすくなります。
STEP8|予定と実際の進捗を比べる
工程表を作ったら、いよいよ工程管理です。
工事が始まったら、
| 計画 | 実績 |
| 今日までにどこまで進む予定? | 実際にはどこまで進んだ? |
を比較します。
予定より遅れている場合は、単に、
「急いで取り戻そう」
ではなく、
なぜ遅れているのか?
を確認します。
工程が遅れる原因の例
- 雨天が多かった
- 想定より施工量が上がらない
- 材料納入が遅れた
- 人員が不足した
- 現場条件が想定と違った
- 他工事との調整が必要になった
原因によって対応方法は変わります。
遅れを発見する → 原因を確認する → 工事全体への影響を見る → 必要なら工程を調整する
ここまでが工程管理です。
初心者は最初から完璧な工程を作らなくていい
初めて工程を組む人が一番困るのは、
「この作業って何日かかるの?」
という部分だと思います。
経験豊富な現場代理人や職長なら、過去の経験からある程度の施工速度をイメージできます。
初心者には、その経験がまだありません。
だからこそ、分からない数字を感覚だけで決めるのではなく、
過去の工事を見る
↓
施工数量を確認する
↓
現場条件を確認する
↓
使用する人員・機械を確認する
↓
経験者に聞く
というように、一つずつ根拠を集めていきましょう。
工程を考えることは、単に日付を決める作業ではありません。
「この構造物を、どんな順番で、どれくらいの人・機械・時間を使って造るのか」を考えること
でもあります。
工程を考えられるようになると、施工方法そのものへの理解も深まっていきます。
発注者は工程のどこを見る?
ここからは発注者側の視点です。
施工者から工程表が提出されていても、
「工期内に収まっているからOK」
だけでは十分ではありません。
主に次のようなところを確認します。
| 確認ポイント | 見るところ |
| 施工方法との整合 | 施工方法と工程が矛盾していないか |
| 必要期間 | 材料・養生・試験・確認等が考慮されているか |
| 実現性 | 施工数量に対して無理な工程ではないか |
| 進捗 | 計画と実績に大きなズレがないか |
| 遅延 | 工事全体への影響を把握しているか |
それぞれ見ていきましょう。
チェックポイント①|施工方法と工程が合っているか
工程表だけを見るのではなく、施工計画書の施工方法と一緒に確認することが重要です。
例えば施工方法では複数の工程が必要なのに、工程表ではその期間が考慮されていない場合などがあります。
「この施工方法なら、本当にこの工程になるのか?」
という視点で見ると分かりやすいでしょう。
施工方法についてはこちらの記事でも解説しています。
チェックポイント②|必要な期間が入っているか
施工そのもの以外に必要となる期間も確認します。
特に、
- 材料調達
- 養生
- 試験
- 確認・立会
- 関係機関との調整
などが工程上考慮されているか確認します。
次の工程へ進むために必要な期間が抜けていないかを見ることがポイントです。
チェックポイント③|無理な工程になっていないか
工程表上では工期内に完成していても、実際には施工できない計画では意味がありません。
例えば、
施工数量に対して極端に施工期間が短い
同時施工になっているが作業場所が重なる
必要な人員・機械を確保できない
などです。
発注者が施工者の工程を細かく決めるという意味ではなく、
施工計画と工程に明らかな矛盾がないか
という視点で確認するとよいでしょう。
チェックポイント④|計画と実際の進捗が合っているか
工事が始まったら、工程表と実際の進捗を比較します。
予定より遅れている場合には、
どの工程が遅れている?
↓
なぜ遅れている?
↓
工事全体に影響する?
↓
今後どう進める?
という順番で確認すると分かりやすくなります。

業者から工事の進捗状況が届いたんですが、工程表の計画より遅れてますね…

まずは、その遅れが工事全体に影響するのか確認しようか。

遅れてても問題ない場合があるんですか?

後の工程に余裕がある場合もあるからね。「何日遅れているか」だけじゃなく「完成にどう影響するか」を見ることが大切だよ。
まとめ|初心者は「何日かかる?」より「どう造る?」から考えよう
初めて工程を考えるときは、いきなり工程表に線を引く必要はありません。
まずは次の8STEPで考えてみましょう。
| STEP | やること |
| 1 | 必要な作業を書き出す |
| 2 | 作業の順番を考える |
| 3 | それぞれの日数を考える |
| 4 | 施工以外に必要な時間を考える |
| 5 | 同時施工できるものを探す |
| 6 | 工期内に完成するか確認する |
| 7 | 工程に余裕があるか確認する |
| 8 | 計画と実績を比較する |
特に初心者に覚えておいてほしいのが、
「何日でやるか」より先に「どうやって造るか」を考える
ということです。
施工方法が分かれば、必要な作業が見えてきます。
必要な作業が分かれば、施工する順番が見えてきます。
順番が分かれば、必要な日数を考えられるようになります。
そして工事が始まったら、工程表を作って終わりではありません。
予定と実績を比較し、遅れの原因を把握し、必要に応じて調整する。
ここまで含めて工程管理です。
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出典・参考資料
本記事では、土木工事における工程管理について、初心者向けに基本的な考え方を整理しています。
実際の工事では、工事内容や施工条件によって適切な工程は異なります。
工事ごとに適用される契約図書、設計図書、共通仕様書、施工計画書等を確認し、現場条件を踏まえて工程を検討してください。



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